コロナ融資奏功、景況悪化も貸出態度は緩め

日銀短観

 日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)では大企業の景況感が11年ぶりの低水準に沈んだ。半面、金融機関の貸し出し態度が「緩い」と判断する中小企業は3月の前回調査から増えた。実質無利子融資など政府が緊急経済対策で用意した手厚い支援策を使い、金融機関が積極的に資金供給していることを裏付ける結果となった。

 信用保証協会の100%保証が復活し、貸し倒れリスクの心配がなくなった金融機関は競うように融資を伸ばす。モラルハザードすれすれで「窒息しそうな企業を前に平時の正論は通りにくい」という雰囲気が漂う。

 実際、今回の短観で金融機関の貸し出し態度判断DI(「緩い」から「厳しい」を引いた値)は中小企業で19となり、3月の前回調査(18)からわずかながら改善した。全規模合計でみても悪化幅は1ポイントにとどまった。

 政府が手当てした大規模な資金繰り支援策がひとまず奏功した形だ。金融システムが傷んだ2008年のリーマン・ショック時と異なり、現時点で金融機関には企業を支える余力もある。

 コロナ禍が長期化した場合、企業が「借りられる臨界点」に達する可能性が高い。融資態度がいかに緩くても企業にとって借金は借金だ。返済能力を超えて貸し込むことはできない。