起業・会社設立時の融資に「新創業融資制度」

自己資金なしでいざ起業をしようとしたときに起業家が直面する問題は、「資金調達をどのようにするべきか」ということです。

資金調達は、銀行などの民間金融機関を頼るのが一般的です。しかし、新規創業の場合は、まだ会社としての実体がないことから、民間企業である銀行に融資を承認してもらうことがなかなかできません。

このような、新規創業の起業家であれば、民間金融機関ではなく、公的金融機関から融資を受けることをおすすめします。

起業・会社設立時に使える日本政策金融公庫の融資は?

日本国内には、公的金融機関はいくつか存在していますが、中小企業や新規起業家に対しての手厚い融資制度を有しているのは「日本政策金融公庫」です。

その日本政策金融公庫の融資制度の中でも創業者向けの融資としては、大きく分けて新規開業資金と女性、若者/シニア起業家支援資金との2つが存在しています。

融資制度 ご利用いただける方 融資限度額 融資期間(うち据置期間)
新規開業資金 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内
(2年以内)
女性、若者/シニア起業家支援資金 女性または35歳未満か55歳以上の方で、
新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)

新規開業資金

新規開業資金は、新たに事業を始めようという方や事業開始後7年以内の方を対象としている融資制度です。

融資限度額は7,200万円となっており、そのうち4,800万円は運転資金として利用でき、残りの2,400万円は設備資金としての融資となり、運転資金への流用は認められません。

返済期間は、運転資金が7年以内、設備資金が20年以内です。なお、据置期間として設備資金の元本の返済を2年、運転資金の元本の返済を2年まで延長することが可能です。

また、融資を受けるためには、原則として担保や第三者による保証人の設定が求められます。

女性、若者/シニア起業家支援資金

女性、若者/シニア起業家支援資金は、女性の方、または30歳未満か55歳以上で新たに事業を始めようという方や事業開始後7年以内の方を対象としている融資制度です。

融資内容については、新規開業資金と同じですが、性別や年齢制限さえクリアすれば融資を受けることが出来るので、自由な起業をしやすい制度です。設備資金及び運転資金とも、返済期間と据置期間は新規開業資金の場合と同じです。

また、融資を受けるためには、原則担保や第三者による保証人の設定が必要となることも新規開業資金の場合と同じです。

これらの融資制度は、民間金融機関に比べると利用しやすい制度です。一見敷居が高いように思えますが、起業前や起業間もない会社であっても、融資を受けやすい制度となっています。

しかし、それでも担保や第三者による保証人の設定はネックとなります。そこでより確実に融資を受けるためにおすすめしたいのが、新創業融資制度という特例措置の適用です。

新創業融資制度のメリット・デメリット

新創業融資制度には、次のようなメリット・デメリットがあります。

新創業融資制度のメリット

  • 無担保・無保証・連帯保証人が不要
  • 融資実行までが早い

最大のメリットは、新規起業家が融資を受ける上で最大の難関である、担保や第三者による保証人が要らない点にあります。さらに、法人に融資するということで起業家本人の個人保証も必要ないため、起業家に有利な条件で資金調達を行えます。

また、申請から融資実行までのスピードが速いのも大きなメリットです。新創業融資制度や女性、若者/シニア起業家支援資金は、融資審査に通常2~3ヶ月ほどかかります。しかし、新創業融資制度を適用すると1ヶ月半ほどで融資が実行されるため、非常にスピーディに資金調達することが可能です。

新創業融資制度のデメリット

  • 通常融資に比べて年間金利が上がる
  • 融資の上限が3,000万円(内、運転資金1,500万円)になる

デメリットに挙げられることとしては、無担保・無保証人の新創業融資制度は、日本政策金融公庫のほかの融資制度と比べると金利が上がってしまうことです。また、融資限度額も3,000万円、うち運転資金も1,500万円に限度額が下がります。

さらに、新創業融資制度を利用するには、新規開業資金や女性、若者/シニア起業家支援資金の適用要件に加え、原則、創業資金総額の10分の1以上の自己資金の用意が必要となりますのでご注意ください。

起業・会社設立時に融資を受けるときの注意点は?

業種によっては、起業時に多額の資金を要します。このような業種の起業では、どのくらい融資を受けられるかが重要になるでしょう。しかし、融資はあくまで借入金のため、返済が必要です。起業後のことも考えた資金計画についても検討しておく必要があります。ここでは、起業や会社設立時に融資を受けるときの3つの注意点を取り上げます。

審査に通過しないと融資は受けられない

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」をはじめ、自治体の創業支援、金融機関、いずれも融資にあたって審査が行われます。そして、審査に通過しないことには融資は受けられません。

具体的な審査内容や基準を知ることは難しいですが、募集要項などから審査内容を推測できるでしょう。

また、日本政策金融公庫の創業支援事業では、自己資金だけでなく、創業計画がしっかりしているかも重要な要素であると公式サイトに記載されていますので、しっかりと計画を練り込んでおくことが審査通過に役立ちます。

無事に融資を受けられるようにするためにも、募集要項や公式サイトなどの情報はしっかり確認しておきましょう。

日本政策金融公庫は、創業支援として公式サイトでの創業計画書の作り方や手引きを紹介しているほか、専門家への相談事業も行っています。このような支援はうまく活用することをおすすめします。

希望する額の融資を受けられないこともある

融資申し込みの際に融資希望額の記入が求められますが、必ずしも希望額満額で審査が下りるわけではありません。

融資する機関の審査状況によっては、希望額を下回る融資になることがあります。融資の申し込みをしても希望額の融資が受けられない可能性があることも頭に入れておきましょう。

希望の融資額が通らないことも想定して、起業に充てられる自己資金を準備しておくことは大切です。起業時の融資は、あくまでも起業をサポートしてくれるものだと考えて、融資にばかり頼りすぎないようにしましょう。

返済によって思うように事業を展開できないことがある

融資は、利息とともに返済が必要な借入金です。起業後には融資を受けた機関の返済計画に従って、返済していかなくてはなりません。

起業したばかりの頃は、事業を軌道に乗せるために何かと出費がかさんでしまいます。返済期間や返済額によっては経営が圧迫され、思うように事業を展開できないこともあるでしょう。起業時にいくら融資を受けられるかだけでなく、月々無理なく返済できる計画も事前に検討しておく必要があります。

日本政策金融公庫の公式サイトには、返済額がわかる「事業資金用 返済シミュレーション」が設置されています。こうしたツールを活用し、経営を圧迫しない返済計画を立ててみましょう。

参照:事業資金用 返済シミュレーション|日本政策金融公庫