外食で「閉店ラッシュ」
「いきなり!ステーキ」は企業存続の瀬戸際に
えっ! いきなりステーキがいきなり......
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛を受け、外食業界は大打撃を受けた。緊急事態宣言は5月25日に全都道府県で解除されたものの、客足の戻りは緩やかなままだ。逆風が吹きつける中、外食業界では過去に例がないほどの閉店ラッシュが起きている。
国内に487店舗(5月末時点)を展開する居酒屋チェーンのワタミは、「三代目鳥メロ」や「ミライザカ」を中心に2020年内に約65店舗を閉店する方針だ。一時休業の影響により、ワタミの国内外食事業における既存店売上高は、4月は前年同月比で92.5%減、5月も同92.8%減と10分の1以下に落ち込んだ。
幸楽苑ホールディングスも、ロードサイドに構える「幸楽苑」の直営店の多くは24時に営業を終えていたが、7月以降は原則21時に営業が終了する。郊外店はもともと、深夜の売り上げが大きくなかったうえに、新型コロナを受けて客足が一層厳しくなったためだ。
今後は大手でも存続の危機を迎える可能性がある。中でも、「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスについては資金ショートの危険性が懸念されている。
いきなり!ステーキは厚切りの大きなステーキが安い価格で食べられることが人気となり、2017年ごろに立ち食いステーキブームを巻き起こした。しかし、度重なる値上げに加え、自社競合を考慮しない急速な出店拡大があだとなり、次第に消費者が離れていった。既存店売上高は2018年4月以降、25カ月連続で前年同月割れが続いている。
いきなり!ステーキのペッパーフードサービスは、2019年12月期の売上高は前期比6.3%増の675億円となったものの、7100万円の営業赤字に転落。純資産はわずか5.9億円、自己資本比率はわずか2%にまで低下した。その後、3月になって、資金繰りに懸念が生じていることなどを理由に、同期の有価証券報告書には「継続企業の前提に関する事項」の注記がついた。
2020年12月期に入っても客数の減少は続いている。既存店売上高は2月が前年同月比で38.7%減、3月は48.9%減、4月の62.6%減と落ち込み幅が深くなっている。5月も50.6%減だった。
苦しい資金繰りを打開しようと資金調達も進めてきたが、状況は芳しくない。2019年12月27日にSMBC日興証券を割当先とする新株予約権発行を発表し、約69億円の資金調達を目指した。しかし、株価は12月27日の終値1294円から下落を続け、3月6日の終値は644円と、新株予約権の下限行使価額である666円を下回り続けている。6月12日時点で調達できたのは17億円にとどまる。
同じく6月1日には、前期部門黒字のペッパーランチ事業を新設子会社に分社化した。外食業界では「この子会社を売って資金を得るつもりではないか」など憶測も飛びかう。
ペッパーランチだけは、単体にて事業継続しないものでしょうか。