トヨタ、在庫あえて31日分の余裕

震災教訓に柔軟対応 トヨタ決算を読む

トヨタは11年の東日本大震災やタイの大洪水を教訓に供給網を見直し、仕入れ先の部品生産の状況をほぼリアルタイムで把握。代替生産できるように拠点の分散を進めてきた。コロナ禍で各国・地域の移動制限や都市封鎖で部品供給網が切れることがあったが、耐性は過去より上がっている。 棚卸し資産回転日数を見るとはっきりする。原材料を仕入れて生産、販売まで何日かかるかを示す指標だ。トヨタの20年3月期は31日と、ホンダ(38日)、マツダ(46日)スバル(47日)に比べて短い。日産の19年3月期は40日程度だった。

生産・販売が滞り、在庫を抱え込むと資金繰りを圧迫し、少なすぎても注文にすぐ応じられなくなる。トヨタは同業より短いタイムスパンで操業しながら、リーマン前の好況期だった08年3月期(25日)に比べると在庫はやや膨らんだ計算だ。

一概に評価はできないが、悪い在庫ではなく、あらかじめ有事に備えた余裕を持たせているという見方が多い。東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「グローバル化で供給網が広がったことも背景にある」と指摘する。

参考になりそうなのが、車体や部品の設計・開発を共有化する新設計手法「TNGA」だ。15年発売の4代目プリウスから導入し、クラウンやカローラ、RAV4といった主力車種に総じて展開が進んだ。

TNGAは異なる車種間で共通部品が増えるため、生産設備の共有化も進む。「導入前のモデルに比べ1ライン当たりの設備投資と開発工数は25%、車両原価は10%それぞれ下がった」。昨年8月、開発担当の吉田守孝副社長(当時)は成果を強調した。