アパレル業界に忍び寄る破綻の連鎖
「コロナ後」の消費回復が不透明
三陽商会は、英高級ブランド「バーバリー」を失った影響もあり、直近の令和2年2月期まで4期連続で最終赤字が続く。約6%を出資する米投資ファンドのRMBキャピタルは、中山氏の取締役再任などに異を唱え、総会に向けて独自の取締役人事案を発表。株主が会社側の案を退ける可能性もあった。
レナウン、三陽商会のみならず、アパレル業界を取り巻く環境は厳しい。節約志向を強める消費者は、スマートフォンなど通信費への支出を優先する一方で、衣服にあまりお金をかけなくなっている。
勝ち組だった低価格のファストファッションにすら、淘汰(とうた)の波が押し寄せている。中でもレナウンや三陽、オンワードホールディングス(HD)といった、売り上げの過半を百貨店販売が占める企業は、特に苦戦ぶりが目立ってきた。百貨店から撤退する動きが加速している。
三陽商会は4月中旬に発表した再生プランで、4年2月期の黒字化や、全店舗の1割強にあたる150店の今期中の閉鎖を打ち出した。大江氏によると、すでに約100店は閉鎖のめどがついているという。経営悪化の原因となってきた、過剰在庫や値引き販売の横行にもメスを入れるつもりだ。
オンワードHDも希望退職募集に踏み切ったほか、2年連続で約700店舗を閉鎖すると決定済み。店舗数は2年でほぼ半減することになる。
ただ、リストラやスリム化だけでは止血にはなっても、成長路線には回帰できない。そこで力を入れるのが、利用者が増えており、在庫を抑制できて収益性も高いEC(電子商取引)事業の育成だ。