融資の受け方

まず銀行の考え方(格付け)を知る

銀行は融資を行うか否か、融資を行う場合には、どの程度の金利を設定するかについて独自の格付けを行っているという点です。

この格付けは、前述した返済能力を見るための評価です。このランキングは公開されていませんが、10段階程度に振り分けられるスタイルが多いようです。ただし、格付けのランクが低いと融資を受けることができません。格付け方法は、各銀行によって異なりますが、基本的には決算書類を中心に審査されるといわれています。

また、銀行間で情報を共有する信用情報機関への登録状況も融資の審査の参考になるといわれています。融資が受けられるかどうか不安な場合は、信用情報機関の登録を見てみることもできます。

融資の決め手「格付け」とは

格付けは、決算書の分析結果に基づく評価(定量的評価)や、経営者の姿勢や経営方針に関する評価(定性的評価)の2種類の評価で決められます。

11段階の「格付け」

非公表ですが、一般的には次の11種類に振り分けられることが多いと言われています。

①リスクなし
財務内容が優れていて、債務履行の確実性は極めて高い水準である。

②ほとんどリスクなし
財務内容は良好で、債務履行の確実性は高い水準にある。
ただし、事業環境などが大きく変化した場合には、債務履行の確実性が低下するリスクも若干ある。

③リスク些少
財務内容は一応良好であり、債務履行の確実性は十分ある。
ただし、事業環境が変化した場合には、債務履行の確実性が低下する可能性がある。

④リスクはあるが良好水準
財務内容は一応良好であり、債務履行の確実性もある。
ただし、事業環境などは変化した場合には、その影響を受けて、債務履行の確実性が低下する懸念がやや大きい。

⑤リスクはあるが平均水準
債務履行の確実性は当面問題ない。
ただし、事業環境などは変化した場合には、その影響を受けて債務履行能力が損なわれる要素が見受けられる。

⑥リスクはやや高いが許容範囲
債務履行の確実性は、現在において問題はない。
ただし業況や財務内容に不安な要素もあり、事業環境などが変化した場合に債務履行能力が損なわれる可能性があり、業況推移に注意する必要がある。

⑦リスクが高く要管理先
業況が低調または不安定で、財務内容に問題がある。
債務の履行に支障をきたすリスクが大きい。

⑧警戒先
財務内容に重要な問題があり、債務の履行状況に問題が発生しているかそれに近い状態にある。
今後、経営破たんに陥る可能性がある。

⑨延滞先
経営難の状態にある。経営改善計画等の進捗も芳しくない。
今後、経営破たんに陥る可能性が高い。

⑩実質破たん先
融資の返済が長期にわたって滞っていて、再建の見込みが薄い。
深刻な経営難の状態にあり、実質的な破たん状態に陥っている。

⑪事故先
法的・形式的な破たんの事実が発生している。

格付けを元に決定される「債務者区分」

「格付け」を元に決定されるのが「債務者区分」です。
債務者区分は、①正常先②要注意先③要管理先④破たん懸念先⑤実質破たん先⑥破たん先に分類されます。
融資を受けている企業は、銀行からいずれかの債務者区分をつけられていて、この債務者区分が銀行から融資を受けやすいかどうかの大きなポイントとなっています。

①正常先
前述した格付けの①~⑥に該当するケースです。
業況が良好で、財務内容に特段の問題もなく、返済に延滞もない企業のことです。
金利条件も低金利で、無担保で融資が受けられる場合もあります。銀行も融資に積極的な姿勢を見せます。

②要注意先
要注意先とは、業績不調で財務内容に問題がある、もしくは返済に延滞が生じている企業のことをいいます。
業況が定常で、財務内容に問題があるなどの企業です。

③要管理先
要管理先は、要注意先のなかでも、特に融資の全部または一部が要管理債権である企業です。
要管理債権とは、3カ月以上の延滞となっている融資、もしくは貸出条件が緩和されている債権(貸出条件緩和債権)のことをいいます。

④破たん懸念先
経営難の状態にあり、経営改善計画などの進捗状況が芳しくない企業のことをいいます
既存融資の返済に非常に長い時間を要するなど、今後経営破たんに陥る可能性が大きい債務者です。

⑤実質破たん先
融資の返済が長期にわたって滞っていて、深刻な経営難の状態にある企業です。
再建の見込みが薄く、実質的に経営破たんに陥っている債務者のことをいいます。

⑥破たん先
法的・形式的な経営破たんの事実が発生している企業です。
民事再生法や会社更生法が適用された企業、破産を申し立てた企業、手形の不渡りなどによって取引停止処分となっている企業などが該当します。

債務者区分をを上げるためには?

債務者区分が正常先であれば、銀行からの融資は受けやすく融資条件(金利など)も低金利になる可能性が高くなります。
債務者区分をを上げるためには、まず自分の会社が銀行からどのような債務者区分に区分されているかを知る必要があります。

自己資本率を増やす

「自己資本比率」をアップするという方法です。
自己資本比率とは、総資本のなかで自己資本(自己資金など)が占めている割合のことです。他人資本(外部から調達した借入金)より自己資本が多ければ多いほど、資金繰りに余裕がある会社であると評価されます。

事業主の信用力を改善する

銀行は、会社の業況だけでなく事業主の借金状況やカードの滞納なども見ています。

銀行の引き落とし口座がたまたま残高不足になっていただけとしても、そのような情報はすべてCIC(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)のデータに残されています。

銀行は、事業主本人の許可を得たうえで、このCICから情報を入手することがありますので、注意しましょう。

説明資料を充実させる

損益計算書が赤字だったり、貸借対照表が債務超過だったりすると、債務区分が下がります。

しかし、これらが一過性のものであり、次期決算では赤字が解消されることが確実な場合もあるでしょう。そのような状況があると、債務者区分が上がる可能性は十分にあります。

したがって、赤字や債務超過が一過性のものである場合には「この赤字や債務超過は一過性のものである」ということを説明できる資料を充実させることが効果的です。

格付けに関するまとめ

自治体や省庁などが募集をしている助成金や補助金などに応募して、受給を受ける方法もありますし、ベンチャーキャピタルや投資家に資金提供してもらう方法もあります。

いずれの方法を選択するにせよ、大切なのは自社の事情に合った資金調達の方法を検討して、その方法に沿って準備を進めることです。

説明資料の充実

「試算表」の提出を求められることも

試算表とは、決算日から時間が経っている場合や決算時点で赤字だったような場合に提出を求められる帳簿です。

決算書が1年の損益を見る書類であるのに対して、試算表はその途中経過をあらわす書類であるといえます。

試算表は、会社の最近の経営状況を把握することができますので、決算書と並んでよく提出が求められる書類です。仮に決算書類に赤字を計上されていても、現在の業績がよくなっている場合などは、この試算表を示してアピールすることが効果的です。

「月次資金繰り表」も用意しておく

月次資金繰り表とは、毎月の資金繰り予定を記載したものです。
月次資金繰り表を見れば、将来の資金繰りについてもだいたい予測することができるため、どのくらい資金が必要になるかなど記録をもとに把握することができるようになります。

資金繰り表は、まず経営計画を作成して1カ月ごとの損益の計画を立て、その入金予想と出金予想を基に作成していきます。

重視される「事業計画書」

事業計画書とは、これまでどのような事業を行ってきたのか、その結果どんな実績になったのか、今後どんな事業がなされどのような実績が見込まれるかを計画した書類です。この事業計画書を元に、事業者は融資希望金額として提示していきます。希望金額とこの事業計画のつじつまが合わないとされてしまうと、融資を受けられない場合があります。

事業計画書の作成方法については、以下の記事もあわせてご覧ください。

融資担当とのコミュニケーションも注意する

融資担当者とは、企業からの相談を受け稟議(書類を作成して関係者にまわし、文書で決裁・承認を得ること)を上げるまでを担当する人で、実際に稟議を承認するのは、決済担当者です。

したがって、この決済担当者から融資担当者が説明を求められた場合に、きちんと説明できるように、融資担当者に融資の必要性だけでなく、返済の見込みや事業計画にあたっての収益の見込みなどをきちんと伝えておく必要があります。

まとめ

銀行からの融資だけでなく、資金調達はさまざまな方法があります。

自治体や省庁などが募集をしている助成金や補助金などに応募して、受給を受ける方法もありますし、ベンチャーキャピタルや投資家に資金提供してもらう方法もあります。

いずれの方法を選択するにせよ、大切なのは自社の事情に合った資金調達の方法を検討して、その方法に沿って準備を進めることです。

当事務所サポートタワーズでは、経営環境に応じたご相談をお受けいたします。資金繰り・キャッシュフロ-のご相談内容に迅速に対応、お力添え致します。