物価下落「21年前半まで」予測
新型コロナウイルスの感染拡大で消費者物価の下落が続くとの見方が広がっている。4月の指数は前年同月比0.2%下がり、3年4カ月ぶりの下落となった。エコノミスト32人の予測平均では1年後の2021年4~6月まで低下が続く。エネルギー価格の低迷のほか、耐久消費財や旅行などのサービス価格の下落を見込む声が多い。
総務省が22日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数が前年同月比0.2%下がった。外出自粛や在宅勤務の広がりで需要が減ったモノやサービスの値下がりが目立つ。9.6%下がったガソリンは原油安に加え、レジャーや業務用の国内需要の減少が響いた。着用する機会の減った婦人用スーツは1.5%、ネクタイは1.2%下落した。不要不急の買い物の自粛により冷蔵庫や洗濯乾燥機、ルームエアコンも下がった。
SMBC日興証券の宮前耕也氏は「家電製品の価格は新型コロナで二極化した」と指摘する。自炊が増え、電子レンジは26.8%、炊飯器は3.8%値上がりした。デスクトップ型パソコンが18.9%、プリンターが11.2%上昇したのは「在宅勤務向けの需要増が背景だ」(同)という。
農林中金総合研究所の南武志氏は「これから半年はエネルギー価格がCPIを押し下げ、秋以降は自動車などの耐久消費財が押し下げる」と予測する。コロナによる需要減退が国内外で長引くとみているためだ。
物価に下落圧力がかかっているのは各国も同じだ。国際通貨基金(IMF)は20年の先進国の上昇率は0.5%と、19年の1.4%から急速な鈍化を見込む。米国は4月のCPIが前月比でほぼ11年ぶりの低下幅だった。
物価が下がれば企業のもうけが減り、賃金は下がりやすい。雇用情勢も悪くなりやすい。賃金が減ったり失業が増えたりすると個人は消費を減らす。もうけがさらに減る企業は投資を抑え、景気は一段と冷える。大和総研の熊谷氏は「デフレスパイラルのリスクが出てきている」と懸念する。